特集 ~保証書がもたらす保釈の末路~

日弁連 保釈保証事業構想について

現在、当協会では保証金を納めることを条件に裁判所が勾留中の刑事被告人を釈放する保釈について更生の観点から支援を行っております。今、この制度の運用を大きく変えようとする仕組みが、弁護士の全国組織、日本弁護士連合会(日弁連)の内部で決定しました。その内容は、この日弁連の弁護士の一部によって運営する協同組合、発行する保証書で保釈手続きを行うということでそれを行う理由として「人質司法打破」を掲げています。「お金なくても保釈請求可能に」こんな見出しで今年1月4日の朝日新聞も大きく報じています。この記事には、「最高裁や法務省とも協議を進めており、今年の5月の協同組合の総会で正式に認められれば今秋にも始める。」としています。この構想を巡っては弁護士会の内からも外からも首を傾げる声があります。そもそも日弁連が大前提とする保証書を保釈金に代えるという形は刑事訴訟法に規定があるものの認めるか否かは裁判所の自由裁量です。しかも、日本での一審での保証書による保釈の割合は1987年以降1%台、つまりほとんどが現金納付なのです。「最高裁がこれを逆転させ、日弁連の構想するこの制度を受け入れるのは信じ難い。」という声が日頃当協会を利用されている弁護士先生方から聞こえてくることと、もう一つの声として本来の保釈保証金の意味がなくなるという意見です。

当協会では、日弁連のこの制度が開始した場合に限り、同様のシステムを開始する予定を立てておりますが、当協会の職員の間でも保釈金の立替と違った保証書での手続きについては、最近危惧する意見が出ています。それは当協会を利用されている弁護士の先生方と少し違う理由です。当協会は、設立時に保釈保証金の立替支援は誰でも彼でもするのではなく、被告人の更生の観点から更生の期待できる被告人に限り支援することを理念として内規を定めております。その一部には、暴力団の資金源になる事件、暴力団の抗争事件に関する被告人と、何度も犯罪を繰り返す被告人には、裁判所の保釈許可が出ていても保釈支援は行わないことを記してあります(日本保釈支援協会 保釈保証金立替支援審査基準表)。

他方、日本での日弁連のこの制度導入と暴力団との関係です。全国の暴力団組員約7万人、暴力団排除条例下で定義付けされている暴力団関係者約80万人と政府が発表している中、年間起訴される被告人6万人弱の約5割に暴力団構成員及び準構成員が含まれています。([PDF]警察庁 平成23年の暴力団情勢(確定値版) P.8(pdf 12枚目) 図表2-2及び当サイト保釈に関する数値「保釈者の状況」参照)。
更にこの暴力団の背後にいるいわゆる暴力団関係者を含めた被告人総数を考慮するとその割合は当然それ以上のものとなります。

日弁連は、この構想で年間保証書を利用する対象者約3万7250人と試算しており(「自由と正義」2011年1月号)裁判所の保釈許可が出た被告人は全て利用対象としています。そうなれば相当数の暴力団員・準構成員及び暴力団関係者がこの中に含まれてしまう事になります。

1970年代半ばから、日本の保釈率が低下してきた背景に暴力団関係者が逮捕・起訴されたとき、保釈手続きをしないケースが多くなってきたことです。これは保証金納付の際、当局が暴力団関係者の保釈金(ブラックマネー)の出所を調べたり、押さえたりすることや最近は暴力団関係者のほとんどは、保釈金を用意できなくなったこと等を昨年暴排条例施行時当協会へレクチャーに来られた警視庁の方から聞かされました。

加えて保釈率低下の一つの要因として、年々国選弁護人が保釈請求に対して消極的になったという日弁連からの意見もありますが、実はその前に被告人からの保釈請求自体が国選弁護人に対してしなくなった暴力団関係者の割合が増えたことが、保釈率低下の根本原因と当協会はとらえるようになりました。

この日弁連の制度は暴力団員・準構成員及び暴力団関係者からみれば、そうした問題が解消されるということで期待が高まることが予想されます。実際、最近当協会へ申し込みをして断った暴力団関係の事件の申込人から朝日新聞の記事に関する「新たな保釈保証制度」についての質問をよく受けるようになりました。このような理由から日常、保釈支援業務を行う我々職員は敏感にこの制度の危険性を感じています。

因に、当協会の平成22年度立替件数は2,527件、平成23年度は2,700件位になる予定です。今後の立替件数の推移は3,000件を上限に横這いになると思われます。なぜならば、前述に述べた通り、暴力団関係事件に係る被告人を対象外として更生の観点から当協会の審査基準に計れば我が国では年間3,000人程度の対象者しかないという事が保釈支援活動を通じて解ってきたというのが現場の意見です。

暴力団員や暴力団関係者にも、もちろん人権はあります。ただ一方で彼らが再び組織に合流することを早め活動を後押しすること、かつ、事件被害者の脅威になるという状況を司法がお膳立てする結果につながることは、この暴力団排除条例時代に日弁連が強力な支援団体になりかねないのです。また「弁護士の協同組合が暴排条例に抵触する行為、東京都暴力団排除条例第18条(暴力団関係者と保証委託契約を取り交わす行為)は制度そのものに問題がある。」といったことも上記の警視庁の方からも聞かされました。日弁連は今年5月の全弁協の総会を経て、今秋にも制度をスタートさせる意向であると報じられています。しかし、なぜそこまでして関係者がこの制度創設を急ぐのか、いつも当協会を利用されている弁護士先生からも疑問の声が出ています。「人質司法」打破という大義にしても人質司法とは「自白と引き換えに保釈を許すこと」を指していることからこの制度が打破するという事はおかしいという意見もあります。

一昨年、日弁連刑事弁護委員会からの要請を受けて、当協会はこの保釈保証保険制度創設のチーム法務研究財団の保釈保証保険研究会議へ講師として出席し、保釈に関する属性データを基にお話しをさせていただきましたが、暴力団排除条例が一定の成果を上げている現在、この新たな制度が日本の社会に順応し、長く根付いていくものになるようにこの制度の決定機関においては、実施の是非も含めて、今一度多面的な見地から検討・議論していただくことを希望します。当協会は、これまで貫いてきた協会理念の基、今後も断固暴力団への支援は行わない姿勢です。


追記

当協会は公益社団法人の取得に向けて、上記文中にあります保釈保証金立替支援審査基準表・保釈に関する属性データ等、運営上主要な書類の全てを平成22年度中に内閣府へ提出済みです。

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【警告】
保釈保証金立替システムは、当協会が開発したシステムです。(特許出願2004-225786)当協会は理事、監事を弁護士と公認会計士で構成している一般社団法人です。最近、営利業者が当協会類似の保釈保証金立替業務を行っている事実がありますのでご注意ください。尚、当協会名と類似の商号を使っている業者に対しては、警告または補償請求を致します。