特集 ~保証書がもたらす保釈の末路~

全弁協が隠す落とし穴 vol.2

先日、自由と正義(2013年5月号vol.64)に全国弁護士協同組合(以下、全弁協という)の行う、保釈保証書発行事業の申込書と契約書が掲載されていました。これらを通読した結果、数点の疑念はありながらもその中で特に強く疑念を抱いた点が以下の2点となります。

1.被告人が暴力団員及び暴力団関係者であっても利用できる点。
2.「株式会社損害保険ジャパン」(以下、「損保ジャパン」という)という損害保険会社の存在。

まず、1においては保釈保証委託契約書第6条(委託者の要件)として以下のように記されております。

乙(全国弁護士協同組合連合会)は、甲が次の各号のいずれかに該当する事が明らかとなった場合には本契約を解除する事ができる。

(1)「暴力団員による不当な行為の防止に関する法律」に規定された暴力団
(2)暴力団対策法に規定する暴力団員
(3)保釈保証の対象となっている被告人の被告事件の共犯者

 

上記を読む限り、「被告人」が暴力団員であろうとも保証対象者とし、飽くまで「保証委託者」が暴力団員でないことが条件となります。当然のことながら暴力団員も人間であり人間である以上、人権は存在し、それは揺ぎ無い確かな事実です。しかしながらその反面、暴力団員である被告人が再び組織に合流することを早め、組織の活動を後押しする事や被害者の脅威になるという結果にも繋がりかねません。

平成23年に暴力団排除条例を施行し暴力団の排除、根絶を掲げる昨今の日本において全弁協の保釈保証書発行事業が暴力団の活動を助長する結果となり元の木阿弥となる状態が想定される事もまた否定できない事実です。

2の問題においてはこの事業の背後に影を潜めている「損保ジャパン」という損害保険会社の存在です。

日弁連や単位弁護士協同組合ニュースでは「事業の継続性・安定性を維持する為に損保ジャパンと提携する」との事でしたが、契約書等には一切この「損保ジャパン」という単語は確認できません。

周知のとおり損保ジャパンは「損害保険会社」であり、この事業における損害といえばやはり保釈金の没取と考えるのが妥当であり、上記損害保険会社から保険として支払われる金銭は「没取」に対しての損害保険金でしかないでしょう。契約書を読む限り、没取の際は保証委託者に自己負担金を除いた90%を求償するとの契約内容ですが、これは全弁協と委託者の間で締結される契約内容であり、万一、委託者が債務を弁済できない場合には損保ジャパンが損害保険金として全弁協に没取された保釈金相当額を補てんするという契約を裏で全弁協と損保ジャパンが締結しているのであれば、そこにはもう「保釈」は形骸化も同然です。保釈の意味は完全に奪われ当然、保釈保証金の意味も失墜し、保釈保証金の意味が失墜するということは延いては保釈を決定した裁判官の裁量も奪われるという事にも繋がります。又、被告人や委託者の保釈に対しての在り方・意識の低下にもつながり保釈金の没取や再犯が多発する事にもなりかねません。

損害保険会社と提携する事によって「何か起きた際は保険で補てんすればよい」という保釈制度を安易に考えるこのスキームは極一部の弁護士の長期的且つ安定した収入を獲得する為の手段でしかなく、「人質司法の打破」を大義名分に株式会社である損保ジャパンと提携し司法全体、日本全体を惑わすこの事業には絶望的な気分になり、保証書を用いて保釈するという見解には再考の余地が残ります。

全弁協が隠す落とし穴

日弁連法務研究財団 保釈保証保険制度研究会 研究主任である弁護士 竹之内 明 氏は実務運用上保釈保証保険の事故率の割合は少ないと提言しているのだが、この事故率の低さは飽く迄、自由と正義2008年2月号(特集1 P30~38)にも掲載されているとおり韓国で事実上全面的に改正され2008年1月1日施行された「改正刑事訴訟法」の刑事手続きの流れ上でこそ成し得ている事であり日本とは刑事手続きの流れが抜本的に異なる。これは推考であるが韓国では起訴前保釈中に事故が起きなかった被告人に対し起訴後の保釈は裁判所と韓国の公的機関が99.2%の株式を保有する「ソウル保証保険株式会社※注釈」が密接に連動し起訴前保釈中に事故が起きなかったという実績がある被告人に裁判所側も保釈決定を出し、そこで念願の保釈保証保険が適用されると考えられる。

韓国での保釈保証保険は「国策」として進められているが故、無論保釈中には事故が許されず、そこで起訴前保釈というフィルターを通し被疑者の保釈中の事故歴の有無を判別できるからでこそ実務運用上起訴後における保釈保証保険の事故率の割合は少ないと考えられる。

下図のとおり、保釈許可率及び、保釈率は年々減少し続け、要因としてはただ「勾留状の却下率の上昇」や「不拘束裁判の拡大」だけでは無いと推察する。

特集「米国での保釈保証書運用の実態」でも記載したとおりアメリカでも崩落した保証書での運用そして韓国とは全く異なった刑事手続きを鑑みれば日本型保釈保証保険の運用は齟齬が生じる事は必至である。

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保釈請求率及び保釈許可率の推移

^ ソウル保証保険株式会社:韓国において独占的に保釈保証保険を扱う保険会社であり、韓国預金保険公社(公的機関)が99.2%の株式を保有する準公的存在である。

米国での保釈保証書運用の実態

全国弁護士協同組合連合会(以下全弁協と言います)による保釈保証書の提出という方法による「保釈手続方法」が検討されていますが、この保証書の提出という方法がアメリカの諸州で採用されている保釈保証会社による保証書の提出という制度に似ているのではないかと考え、その制度の実情の一部を2012年末に日本保釈支援協会として米国に弁護士を同行し調査してみました。

事前の調査で米国の中で保釈制度改革を行い成功を遂げ理想モデルとして他の州の保釈制度を牽引し保釈保証会社による保証書提出という制度を積極的に採用していないとされていたマサチューセッツ州の州都ボストンに出向きました。そしてボストン市にある州のボストン地方裁判所(Superior Court)を訪問し、同裁判所の保釈に関する責任ある地位にある方(State Bail Administrator-以下SBA氏と言います)と面会しボストン地方裁判所ビルの14階でお話を聞くことが出来ました。

お話の冒頭、我々はこれまで日本にない保釈手続きとして全弁協の構想スキーム(保証書による保釈手続と保険会社を利用する仕組み)を説明し、参考になる資料を集めていると伝えたところ、SBA氏は即座に「保証書を利用した保釈制度は詐欺みたいなものだ。」と話しだされたのには驚きました。SBA氏によれば、マサチューセッツ州では保証書を利用した保釈金納付は極めてまれなことで、我々の調査当初、インターネットによっても保証書を使った保釈金の納付が見つからなかったことや、一般市民が保証書の存在も知らなかったことは、同氏の評価からむしろ当然だと理解できました。

我々が集めた乏しい資料によってもアメリカでもいくつかの州では保証書を利用した保釈手続きは認めていない事が解りました。

SBA氏は、保証書の利用に批判的な理由として、「保証書で保釈手続を行い、保険会社に担保させた場合、被告人の逃亡・罪証隠滅等の抑止力は低下する。裁判所は抑止の為保釈金を釣り上げる。そして、そのことで保釈制度を利用してビジネスを展開する奴ら(保釈業者)が増加し、過当競争になり、更に抑止力が低下した結果現実的に必要な保釈金額より遥に高い保釈金が決定される様になった。我が国のこの様な歴史に学び保証書による運用は慎重に行うべきである。」と忠告してくれました。

我々は、上記のお話に係る資料の提出をSBA氏に求めたところ、2001年のマサチューセッツ州最高裁判所による保釈許可決定の写しと保釈許可決定に関するレポートをくれました。この決定の結論は裁判所は被告人に対して、現金納付の場合と保証書を使う場合について保釈金額を二重に定める事ができ、現金納付の場合の金額は保証書を利用する場合の保証料の最高額の等しい金額とする事ができるというものでした。

SBA氏が手渡してくれた2001年のマサチューセッツ州最高裁判所による保釈許可決定の写しと保釈許可決定に関するレポートをご紹介いたします。
(和訳は株式会社サン・フレア、原文は次のpdfファイルをご確認ください:COMMONWEALTH vs. JAMES RAY.

SJC-08546

マサチューセッツ州 vs. James Ray

サフォーク、2001年6月12日~2001年10月10日

出席者:首席裁判官Marshall、裁判官Greaney、
同Ireland、同Spina、同Cowin、同Sosman、同Cordy

 

保釈 法律の解釈 用語「対当額」

本件民事訴訟は、サフォーク郡の申立てにより、マサチューセッツ州最高裁判所において2001年4月4日に開始。

保釈決定命令は取消し。本件はGreaney裁判官が記録。

州代理人:特別地方検事補Robert L. Goodale(地方検事補Kevin Connellyが補佐)

被告代理人:Paul J. Machado

以下の者が裁判所の友(amici curiae)として意見書を提出した。

Greta A. Janusz(International Fidelity Corporation代表)

司法長官Thomas F. Reilly、司法長官代理として、司法副長官John E. Bowman, Jr.、同Dean A. Mazzone

Richard Verrochiの代理として、Peter D. AndersonおよびGeorge T Campbell, III

Cordy裁判官

当裁判所に提起された問題とは、刑事事件における公判前釈放の条件として、裁判官は保釈金に関する2つの選択肢を異なる金額でもって適切に決定できるか否か、ということである。1つは、保証会社が発行する保釈保証書の形式で納める場合の金額であり、もう1つは、保釈保証書の購入に要する保証料(払戻しなし)の最高額と等しい金額であって、現金によってのみ支払うことができる金額である(注 [1])。この問題を解決するためには、マサチューセッツ州一般法第276章第58条の該当条文、すなわち、最初のパラグラフの最後の文を解釈する必要があるが、その条文は以下のとおりである(下線は筆者による)。「地方裁判所の裁判官もしくは書記官もしくは書記官補、保釈審議官、または衡平法裁判所主事が現金による保釈金を要すると判断する場合、被告人は、保証会社の発行する保証書をもって対当額を提供することを認められるものとする。」(注 [2]

保釈の法制の歴史、法改正に至った背景、およびその意図する立法目的に基づいて、当裁判所は、釈放の条件として、裁判官は本件のような保釈金に代わる複数の選択肢を適切に定めることができる、と判断する。

1. 訴訟の背景

2000年12月26日、James Rayは、住居への武装襲撃、武装強盗、危険な武器による暴行殴打、および目撃者に対する脅迫の容疑での告発に基づく罪状認否のために、マサチューセッツ州連邦地方裁判所フォールリバー支部に召喚された。保釈金は、100万ドルの保釈保証書または現金10万ドルと定められた。その後、ブリストル郡の大陪審が同一の罪でRayを起訴した。Rayが初めて上位裁判所に出廷した際、マサチューセッツ州は、上位裁判所の裁判官に対して、地方裁判所の定めた条件と同一の保釈条件を指定するよう要請した。裁判官は、州一般法第276章第58条において、自らには保証書の場合と現金の場合とで異なる金額を指定する権限はないとして、州の要請を拒否した(注 [3])。保釈金は、「10万ドル」と定められた。というわけで、Rayは、現金10万ドルを裁判所に直接払い込むか(この場合、本件結審時に払い戻されることとなる)、保証会社の発行する額面10万ドルの保証書を手配するかのいずれかの方法で、保釈の条件を満たすことが可能であった。後者の場合、保釈金の10%以内、すなわち、最高1万ドルの保証料を保釈保証人に支払うことになり、この保証料は払い戻されない(注 [4])。

マサチューセッツ州は、裁判官の保釈命令からの救済を求めるため、州一般法第211章第3条に従って、郡裁判所に対して申立てを行った。担当の単独裁判官はこの救済を認めた。そして、法律の当該条文は「曖昧である」と断じた上で、「対当額」という語は、保釈保証書の金額と現金による保釈金は同額でなければならないという意味にも取れるし、「あるいは、保釈金として指定された金額の現金をもって得られる保証書の『対当額』、すなわち、10万ドルあれば100万ドルの保証書を購入できる」という意味にも取れる、と結論づけた。この単独裁判官は、上位裁判所がこれまでこの後者の解釈を採用してきたことを指摘し、自らもこの解釈を容認した。そして、本件保釈命令を取り消し、その解釈に基づいてさらに審理を行うよう、上位裁判所に事件を差し戻した。また、単独裁判官は、この問題に対する判断を差し控え、「この論点に関する最終判断」を求めるとして、大法廷に報告した。この論点は、「制度上の重要性を有しており、第一審裁判所において恒常的に生じている」からである。

2. 「対当額」の意味

州一般法第276章第58条の該当条文によると、現金による保証金を要する場合、被告は「保証会社の発行する保証書によって対当額を提供することが認められる」とされるが、この規定は1981年の改正によって追加されたものである(1981年法第802章第2条)。「対当額」という語は法律では定義されていないので、この文脈での解釈は第一印象の問題となってしまっている。法律の文言は、立法目的を確認するにあたっての主要な拠り所であり、法律の文章が明確で曖昧さを排したものであれば、その明白な意味に従って解釈しなければならない。Delaney v. Commonwealth, 415 Mass. 490, 494 (1993)、Bronstein v. Prudential Ins. Co., 390 Mass. 701, 704 (1984)、およびその他の引用されている判例を参照しても、「対当額」という語は、本件で用いられているのと同様に、価値が等しいことを明白かつ曖昧さを排した形で意味するものとはなっていない。

相当という語には本来2つの意味がある。価値が等しいことと、効果が等しいことである(注 [5])。立法者が使用したこの言葉にどちらの意味を当てはめるかによって、条文の解釈が変わってくるのだが、そのどちらにも理があるのだ。法律の文章が曖昧であるため(注 [6])、「法律の目的と立法の経緯」を検討するのが妥当である(Massachusetts Hosp. Ass’n v. Department of Med. Sec., 412 Mass. 340, 346 (1992)参照)。不完全な文言のために立法の目的や意図が明確でないときは、「法律は……その発展、立法機関を通じた進展、時代に応じた変遷、以前の立法、現代の慣行および条件、ならびにその法律が属する実定法の体系と関連づけて解釈するべきである……」とされている(Commonwealth v. Welosky, 276 Mass. 398, 401 (1931)参照)。こうした観点から、当裁判所は、「その制定理由、是正すべき欠陥または不完全さ、および達成すべき主要な目的」と関連づけて本件における法律の解釈を行っている(Telesetsky v. Wight, 395 Mass. 868, 872 (1985)およびそこで引用されているCommonwealth v. Galvin, 388 Mass. 326, 328 (1983)を参照のこと)。

3. マサチューセッツ州における保釈制度の改革の歴史

1981年法第802章によって加えられた保釈金に関する条項の立法化の経緯については、よくわかっていない(注 [7])。しかし、マサチューセッツ州における保釈制度の改革の経緯ははっきりしていて、1970年代には州一般法第278章第58条の全面改正に至っている。この条文に含まれる用語については、この条文が属する法体系に照らして検討しなければならないので、そうした過去の経緯を調べる必要がある。

1967年より前は、被告人が公判前の釈放を認めてもらうためによく使ったやり方は、保証業者から保釈保証書を購入することによって保釈金を納める、というものであり、このために保証書の額面の5~10%の保証料(払戻しなし)を保釈保証業者に支払った。このやり方は全米でほぼ同様であった(注 [8])。1960年代になると、次第に、この制度は問題があるので容認できない、とみなされるようになってきた(注 [9])。連邦最高裁判所は、イリノイ州の保釈制度に関する報告書において、次のように述べている。

「1964年より前は、イリノイ州では、保釈保証業者制度は全盛を極めており、悪用されるケースも後を絶たなかった。この制度の下では、保釈保証人は、法律の認める上限の手数料(保証額の10%)を徴収することを通例としていて……被告が保証条件を完全に充足してもその全額を保持していた。……こうした高額な『保証料』の支払いは、リスクの高い者だけにとどまらず、リスクの少ない者にも要求されていた。その結果、保釈保証人は多額の利益を得るのに対して、被告は過酷で抱えきれないような負担を負わされることとなり、裁判所ではなく、保証業者が保釈金制度の現実の運用を実質的に支配していた。」(Schilb v. Kuebel, 404 U.S. 357, 359-360 (1971)、脚注略、引用一部省略)

1966年法第681章の成立(注 [10])を機に、マサチューセッツ州は、保釈制度の改革において全米を主導するようになり、地方裁判所の管轄となる犯罪については、保釈金の納付による釈放ではなく、本人の誓約書による釈放を法律上の根拠とするように変更すべく法改正を行った最初の州となった(Spangenberg, Bail Reform in Massachusetts: 1965–1967, 52 Mass. L.Q. 135, 146 (1967)参照)。この変更は、1971年法第473章第1条(保釈制度改革法)の成立によって適用範囲が広げられ、死刑対象犯罪を除くすべての犯罪が含まれることとなった。この法律は、州一般法第276章第58条を全面的に改正するもので、被告は、「保証人なしで、本人による誓約書に基づく釈放」を認められ「なければならないが……かかる釈放により被告が裁判所に出廷することが合理的に保証されない(と判断される)場合はこの限りではない」と規定された。これについては、州一般法第276章第58条を参照されたい。また、1971年法第473章第1条に記載のとおりである。なお、Delaney v. Commonwealth, 415 Mass. 490, 495 (1993)およびその他引用されている判例も参照のこと(「立法者は、第58条で、被告人は、保証人なしで被告本人による誓約書でもって釈放を認められるとする根拠を定め、保釈が認められないとされる状況を綿密に規定することで、被告人の権利を保護することを意図していた」)。

本人による誓約書を根拠と定めたことで、保釈金を納めなければならない被告人の数は減少したが、保釈という仕組みが完全に撤廃されたわけではなかった。S.R. Bing & S.S. Rosenfeld, The Quality of Justice in the Lower Criminal Courts of Metropolitan Boston (1970)を参照されたい。マサチューセッツ州の保釈保証人制度に存在していた腐敗(注 [11])を一掃し、その結果残ったものを改革するためのさらなる取組みにおいて、上述の刑事裁判所は、1971年11月16日に、いくつかの地方裁判所を選んで、試験的な保釈プロジェクトの実施を命じた。「保釈金一定比率預託パイロット・プロジェクト(percentage deposit bail pilot project)」と名付けられたこのプロジェクトでは、本人の誓約書に基づく釈放は適さないとされた被告人であっても、従来であれば手配する必要があったであろう保釈保証書の額面の5%相当の金銭を裁判所に預託することによって釈放が認められた。預託金は、被告人が本人による誓約に必要な条件をすべて充足した時点で返還されることとされた。

このプロジェクトにより、調査対象となった裁判所では、この条件の下で釈放された被告人の不出頭率は、保証会社の保釈保証書を利用した制度の下で釈放された被告人の不出頭率よりも低い、ということがわかった。これは、おそらく、預託金が払い戻されることになっていたからであろう(注 [12])。Final Report of the Percentage Bail Project to the Chief Justice of the Superior Court and the Chief Justice of the District Courts 68 を参照のこと(注 [13])。このプロジェクトの成功により、この預託金方式は地方裁判所で広く採用されることとなった。また、地方裁判所の運用規則にも取り入れられることとなった。

「司法実務の基準 - 公判前釈放」と題された運用規則第4-77号が、1977年8月31日に地方裁判所の首席裁判官より交付された(注 [14])。この規則には、「保釈保証書に代わる誓約書と一定比率の預託金の併用」と題された基準1:07が取り入れられていた。その内容は、「保釈保証に代えて、誓約対象額の10%程度の現金を預託させることとし、この預託金は、求めに応じて裁判所に出廷することを条件として本人に返還されるが、これは被告人の自発的な出廷を確保するのに効果的な手法であることがわかっているので、これを推奨する」というものである。この基準の注釈では、次のように記されている。「保釈保証に代わる現金預託の利用を促進するため、裁判所は、誓約対象額の一定割合(通常10%)での預託を認めている。このやり方が現在も利用されているために、これが被告人に有利に作用するために、最高裁判所がこの手続を踏襲した事案を異議なく審議しているため、さらには、おそらく最も重要なことだが、この手続が公判前釈放の目的を推進するものであるため、保証のつかない被告本人だけの誓約が認められない事案においては……この預託の手法が推奨される。」

同様に、州の保釈監督官から合同司法委員会のメンバーである下院委員長に宛てた1998年7月14日の書簡によれば、上位裁判所の保釈委員会は、同裁判所の裁判官に対して、保釈命令を出すときは、保釈保証書による金額と現金での納付額の両方を記載し、現金での納付額は保証の引受けにおいて徴収される手数料の上限である10%とすることを推奨、奨励するようになった。

こうした経緯に照らすと、1970年代に登場した保釈金一定比率預託制度は、保釈制度の改革においてうまく機能し広く受け入れられたモデルであるのだが、立法者は、1981年に第58条を改正するにあたり、この制度よりも保釈保証書を優先するという方針変更を推奨しようとしたのではない、と我々は確信している。そのため、現在では、「現金保釈金制度は、欠陥があるとしても、保釈保証人制度に代わるより優れた制度である、ということで意見が一致している」。Harmsworth, Bail and Detention: An Assessment and Critique of the Federal and Massachusetts Systems, 22 New Eng. J. on Crim. & Civ. Confinement 228-229 (1996)参照。

当裁判所の見解については、保釈委員会により1981年改正法の文言に長年にわたって与えられてきた解釈もまた、さらなる裏付けとなる。第58条に対する1981年改正法の発効からほどなくして、保釈委員会は、「対当額」という文言を次のような意味に解釈した。裁判官が保釈金を単一の数字(たとえば1,000ドル)と定めた場合は、法律によれば、被告人は、その全額を現金による保釈金として納付するか、保証会社に手数料を支払って同額の保証書を出してもらうかしなければならなかった。しかしながら、裁判官が現金による保釈金としてある金額を指定し、別の金額を保釈保証書の金額として指定する命令を下した場合は、法律の「対当額」に関する規定はその保釈命令には適用されない。なぜなら、裁判官が指定したのは、裁判所にとって、それぞれの方式において許容できるリスクを金額で表したものであるからだ。

我々としては、州一般法第276章第58条の正しい適用に関する保釈委員会の論拠には、全面的に同意することはできない。しかし、選択可能な保釈金の額を設定することは、20年にわたって異議なく受け入れられてきたという経緯がある。マサチューセッツ州の裁判所の多くが、保釈保証書に代えて10%の現金による保釈金を指定するという運用を続けていることも併せて考えると、仮に立法者がこうした運用を廃止することを意図していたとすれば、1981年に制定された法律の文言では明らかにその意図を達成できていない(注 [15])。立法機関は、1981年以来何度も州一般法第276章第58条を改正してきたが、この部分の文言が変更されたことは一度もなく、この箇所をさらに踏み込んで改正する試み、すなわち、「保釈金の額は、現金または保証書のいずれによって定められるかにかかわらず、同額とする」と具体的に規定することには、その都度拒絶してきた(注 16[16])。1999 Senate Doc. No. 893などの判例を参照されたい。

4. 結論

法律の背景や目的に照らし、当裁判所は、州一般法第276章第58条の第1パラグラフの最後の文にある「対当額」という語は、効果において等しい金額を意味するものと結論する。保釈金との関連においては、当裁判所は、現金による保釈金の額の10倍に定められた保釈保証書は、その効果において現金による保釈金と同等であると結論する。その理由はいくつかある。まず、保釈保証書の額は、現金による保釈金として設定された額で得られる保証の最低額と等しく、次に、被告人に対する金銭的負担がほぼ同一であり、そして、訴訟手続全体を通じて被告人の裁判所への出廷を確保する効果が同程度に高い、というものである。それゆえ、現金による保釈金の額の10倍の金額で保釈保証書の額を定めるというやり方、言い換えれば、保釈保証書の10%の現金相当物を提供することは、法律で認められるものである。

したがって、以上のとおり命じた。

 

Spina裁判官(反対意見)

私は反対を表明させていただく。州一般法第276章第58条は、「現金による保釈金が求められる場合、被告は、保証会社の発行する保証書をもって対当額を提供することが認められる」と定める。私は、この規定にいかなる曖昧さも認めないし、当裁判所が確認したように(前述)、「相当」という語の「本来の2つの意味」によって何らかの曖昧さが生じているとは考えない。価値において現金による保釈金と等しい保証書は、効果においても現金による保釈金と同等の保証であり、このことは、いずれであっても、保証書の額面は裁判官の指定した現金による保釈金と同等であることを意味する。

私の見解では、当裁判所による法律の解釈は、「相当」という語の曖昧さに由来するものではなく、文章上は表れていない「提供」という動詞の間接目的語に由来すると考えている。この法律において、保釈金は、現金、保証書のいずれの形態であるかにかかわらず、1つの法主体に対してのみ提供される。その法主体とは、州でなければならない。当裁判所がたどり着いた結論であれば、「提供する」という動詞に2つの異なる間接目的語が必要となる。被告人が現金で保釈金を提供するのであれば、間接目的語は州であり、「対当額」を提供するのであれば、保釈保証人である(前記のとおり、「『対当額』とは、現金による保釈金として指定された金額(を保釈保証人に提供すること)によって得られる保証であって、すなわち、10万ドルあれば100万ドルの保証書を購入できるということである)。

当裁判所がたどり着いた結論は、法令解釈の基本的な規則に反するものである。この結論には、特筆に値する3つの側面がある。第一に、被告人に無意味な選択肢が与えられていることである。保釈金を裁判所の事務官に現金で支払い、事件の終結時にその支払額を取り戻すか、保釈保証人に対して、同じ金額を保釈保証書の保証料として、これに手数料を添えて支払い、事件処理後にはまったく回収を受けられないか、のいずれかである。第二に、当裁判所が述べているように保釈保証制度が有害であるとすれば、そして裁判所の友が提供した調査がそうではないと示しているならば、立法機関は、保証会社を保釈保証業から締め出すためにこのような手の込んだまわりくどい仕組みを作り上げるのではなく、彼らを完全に排除することができたはずである。第三に、保釈法令は、無罪推定に基づいて本人による誓約書を優先することとしており、そのため、保釈金を合理的な金額に設定するよう求めている。Mendonza v. Commonwealth, 423 Mass. 771, 774 (1996)を参照のこと。このように保釈法令を解釈すると、保釈保証書は、公判中の自由を得るために現金で保釈金を払う余裕のない被告人にとっては、現実的な選択肢ではない。

当裁判所は、裏付けとして「選択可能な保釈金の額を指定することが、20年にわたって異議なく受け入れられてきたという経緯」を挙げている(前記のとおり)。実際のところ、当裁判所が指摘しているように、裁判官は様々な方法で保釈金を設定している。当裁判所が認めるやり方で保釈金を設定する裁判官もいれば、この反対意見で認めているやり方で保釈金を設定する裁判官もいるし、また別のやり方で保釈金を設定する裁判官もいる(たとえば、現金なら1万ドル、保釈保証書によるなら2万5,000ドル、など)。これらの方法のいずれも、本質的に間違いではない。立法機関は、こうしたやり方を反映し、かつ、検証することで法律を改正することができるはずであり、そうすることによって、裁判官に対して、被告人の出廷を確保するために保釈金を設定する際には状況に応じて柔軟に対応できるような裁量を認めることになるのである。

私は、法律の用語が曖昧であるとは考えていないので、その用語については、一般的な意味で解釈するべきであると考える。つまり、被告人が差し入れる保釈保証書の金額、すなわちその額面金額は、裁判官が現金による保釈金として指定した金額と同額となる。

 


[1]     当裁判所は、司法長官、International Fidelity CorporationおよびRichard Verrochiによる裁判所の友としての意見書を承認する。

[2]     本意見書において、当裁判所は、この規定は上位裁判所の裁判官が定める保釈金にも適用されるとの前提に立っているが、そのような判断を下したものではない。

[3]     この上位裁判所の裁判官は、決定を行うにあたって、州一般法第276章第58条を解釈する根拠として、同裁判所の別の単独裁判官による最近の意見書および命令を部分的に引用した。Commonwealth vs. Kane, S.J.C. No. 2001-0006 (Jan. 9, 2001)を参照されたい。この事件では、上位裁判所の裁判官が被告に15,000ドルの現金または15万ドルの保釈保証書による保釈を認めた命令に対して州が控訴したのだが、これについて、担当の単独裁判官が検討を行った。この単独裁判官は、「保釈保証書の保証料と同額の現金による保釈金を定めることは通例となっている」と認めたものの、そうした命令は、「現金による保釈金の額と保釈保証書の金額は等しくなければならない」とする法律の下では不適切である、と結論した。当該単独裁判官は、被告に保釈を認めた裁判官が15万ドルの現金または保釈保証書を意図していたのか、それとも、15,000ドルの現金または保釈保証書を意図していたのか判断できなかったため、本件を再審理のために差し戻した。

[4]     州一般法第276章第61B条の中のある条文は、「保証業を営む者はすべて、上位裁判所が随時定める規則に準拠するものとする」と定めている。保証業者に関する上位裁判所規則第16条は、次のように定めている。「いかなる保証業者も、保証人としての業務の対価として、過大または不当な手数料を請求または受領してはならないものとする。保証業者が担保の設定を受けたときの手数料が誓約対象額の5%を超える場合、または保証業者が担保の設定を受けないときの手数料が誓約対象額の10%を超える場合、過大または不当な手数料であるとみなす。」

[5]     Black’s Law Dictionary 561(1999年第7版)によると、「相当」とは、「1. 価値、効力、量もしくは額、効果または重要性が等しいこと。2. 効果または機能が対応していること、ほぼ同一であること、実質的に一致すること」と説明している。Webster’s Third New Int’l Dictionary 769(1993年)の定義では、「特に効果または機能について、対応しているか実質的に同一であること」とある。さらに、American Heritage Dictionary 462(1991年)では、「類似または同一の効果を有すること」と定義されている。

[6]     Commonwealth v. Wotan, 422 Mass. 740, 743 (1996)を参照のこと(「繰り返し」という語は2通りの意味があるので、本件の事実に適用する際にこの語が曖昧であると結論づけることは、非現実的なことでもなければ道理に反することでもない」)。

[7]     1981年議会資料第7176号に関する法案は、最終的に1981年法第802章で承認されたが、その公式な法案の経緯の記録には、議会による公聴会、証言または報告が行われたとの記述はない。経緯として示されているのは、ここで問題となっている法律の文言は「議会の法案委員会が第三読会で提言した」、という記載のみである(1981 House J. 3123)。

[8]     Foote, Compelling Appearance in Court: Administration of Bail in Philadelphia, 102 U. Pa. L. Rev. 1031, 1046 (1954)などを参照のこと。

[9]     Bail: An Ancient Practice Reexamined, 70 Yale L.J. 966 (1961)の注釈を参照のこと。

[10]    1966年法第681章は特別法であり、1968年7月1日に失効することとされていた暫定的な措置として採用された。この特別法が適用されるのは、地方裁判所の扱う一定の犯罪のみであり、保釈に関する州一般法を修正するものではなかった。

[11]    改革前の保釈制度が抱えていた多くの問題の中に、「保証会社やその仲介業者と『保釈を担当する権限を有する者』との間の癒着」があった。サフォーク郡のある保釈審議官は、「この職を続ける唯一の方法は、特定の保証仲介業者に『気に入られる』ことだ」と報告していた。Final Report of the Percentage Bail Project to the Chief Justice of the Superior Court and the Chief Justice of the District Courts 10(最終報告)を参照のこと。改革前の保釈制度の欠陥は、Matter of DeSaulnier (No. 4), 360 Mass. 787 (1972)にも例示されている。この事件では、裁判所は、保釈保証人と不適切な協調関係を持った上位裁判所の裁判官については、裁判官としての資格を停止または剥奪する必要がある、とした。

[12]    保釈の目的は、被告人を裁判所に確実に出廷させることである。Commonwealth v. Stuyvesant Ins. Co., 366 Mass. 611, 614 (1975)より。

[13]    上記最終報告書の18~20ページと24~25ページによると、出廷義務を履行しなかった被告人の保釈保証書の没収に関する保釈保証人に対する訴訟のほとんどが、地方検事の事務所の名目「費用」で決着していて、それは保証書の額面金額をはるかに下回るものであることも明らかになっている。ある関係者は、もし「被告人が出廷しなかったすべての事例で……全額を支払うよう求められる」とすれば、「保釈保証業者は潰れてしまう」だろう、と述べた(同20ページ)。

[14]    首席裁判官は次のように指摘した。「規則という意味で適用が義務づけられているものではないが……(この基準は)公判前釈放手続で処理される様々な側面に関して、基準委員会が到達した定性的コンセンサスを表すものである。そのため、各裁判所は基準を遵守するよう努めるべきであり、望ましい実務を記載したマニュアルとして取り扱い、正当な理由があるとき以外は逸脱してはならないものとするべきである。また、基準全体にわたって、制定法の条文や判例法が数多く参照されており、当然のことながら、これらも遵守しなければならない。」

[15]    Rayは次のように主張している。保釈保証業界のロビイストたちが1981年改正法を仕掛けたのであって、それゆえに、立法者は、保釈保証書の額と保釈金の代わりに納める現金は同額で設定されるという意味になるような文言を意図していたはずである。そうでなければ、この改正は、それを支持した人たちの利益に資することにはならなかったであろう、というのである。この主張は、我々が突き止めた限りでは、この改正を支持した民間の業者の意図と法改正を行った立法機関の意図を混同しているものである。それらは必ずしも同じではない。現金による保釈金と保釈保証書による保釈金を完全に同一の金額とすることを求めるのが立法者の意図であったとすれば、簡潔かつ明確にそう書くことができたであろう。さらに重要なこととして、Rayの議論は、1981年に保釈保証業界が直面していた課題の重大性を考慮していない。業界は、大々的な非難にさらされていて、保証業者による保釈金の納付を全面的に禁止しようとする動きが全米で勢いを増していた。この動きは、1985年には、米国法曹協会が保証業を営むことを禁止するよう求めるに至った(2 ABA Standards for Criminal Justice, standard 10-1.3(c) (2d ed. rev. 1985)より)。結果的には、統一州法委員会全国会議は、刑事手続においては保証人が対価を受け取って保釈金を納付することを認めない、とする統一規則を採用することとなった(Unif. R. Crim. P. 341(g)(2), 10 U.L.A. 42 (Spec. Pamph. 1992)より)。上記2 ABA Standards for Criminal Justiceのstandard 10-5.3(d)も参照されたい。マサチューセッツ州では、1970年代になると、一部の裁判官は現金のみの保釈金を指定するようになった。このやり方は、地方裁判所の「司法実務の基準 - 公判前釈放」の1977年版において、「適法性に疑いがある」と指摘され、差し控えるべき、とされたものである。Administrative Regulation No. 4-77, standard 1:08を参照のこと。この状況では、いかなる形態であろうとも、マサチューセッツ州における保釈保証書制度の存続が法律的に裏付けられれば(被告人にとっては現金という選択肢ほど魅力的ではないとしても)、保証業界にとって立法上の成果であっただろう。1981年に改正された州一般法第276章第58条は、我々が目下その意図を解釈してきたが、そうした成果を達成するものである。

[16]    反対意見が示すところと反して、裁判官が保証書の形式による保釈金と10%相当の現金という選択肢を指定する場合であっても、一部の被告人にとっては保釈保証書の方がより現実的または魅力的な選択肢となることがある。保釈保証業者に関する上位裁判所規則第16条が認める上限額である10%以内であれば、保証会社は、自社が提供する保証について手数料を自由に設定することができる。よって、被告人が保証会社に現金以外の担保(不動産など)を差し入れるならば、保証の最高額は5%に下がる。

上記の資料からイリノイ州と同様、全弁協という営利目的の組合が保証書を発行する事により営利目的団体が挙って参入し「保釈」に対しての存在意義、あり方も崩落する可能性が危惧されそれは各界に影響するでしょう。具体的にその影響を各界ごとにまとめました。

法曹界
・裁判官の裁量が奪われる
(保釈保証保険によって保釈金額の意味が失墜する。)
・国選を含む弁護人の保釈申請の可否及びタイミングが被告人のイニシアチブで進められ、弁護人の考えは被告人によって一掃される。
・保釈取消し件数の増加
警察
・暴排条例によって低下している暴力団の保釈率も保証書の運用により増加が見込まれる。

市民
・暴力団の保釈率が増加することにより市民の脅威となり生活が脅かされる。

この各界に懸念される影響の中、日弁連法務研究財団 保釈保証保険制度研究会 研究主任である弁護士 竹之内 明 氏は日弁連新聞(第457号 平成24年2月1日「新たな保釈保証制度導入へ」)において「保証書での運用が始まれば早晩、保証料の低額化や預託金の廃止も可能になるものと考えられる」と示唆しており、この考え方は2011年「自由と正義」の同氏のレポートから韓国における保釈保証書運用が大きく影響しており韓国では国家的な経済事情から政府主導による国策として勾留・拘留の管理費用削減として保証書の導入という経緯があり、対して日本の保釈実務での保証書による保釈の割合は、1987年以降1%台、1998年は1.2%とし、明らかに日本の裁判所はこれに消極的です。この数値から覗えるように日本国政府が推進するという前提も無いままに特殊な事情があって成立した韓国の制度をあてはめる事はあまりにも牽強付会であります。
保釈という目的は同質にせよ当協会ではあくまで被告人の更生の観点から支援を行い
保釈保証金立替支援審査を設けており暴力団の資金源となる事件、暴力団の抗争事件に関する被告人及び、何度も犯罪を繰り返す被告人、実刑5年以上の判決が見込まれる事件は裁判所の保釈許可が出ていても保釈支援は行わないこととし、契約者においても保釈保証金没取の際は当協会の立替金の弁済責任を果せる方と定めております。(日本保釈支援協会 保釈保証金立替支援審査基準表)こうして審査を設けた上で業務を行う事により裁判官の裁量も尊重しております。「保釈」に対しての存在意義が根底から変わらないよう当協会は努めております。

これからの日本の保釈事情

上記の写真は今年の6月に当協会の支援者が所用でロサンゼルス市警に出向いた際、ロサンゼルス市警のすぐそばに軒を連ねて営業しているベイルボンド(Bail Bonds)いわゆる保釈金の立替会社を写したものです。

日本で例えると運転免許センターの近くに行政書士事務所が何軒も連なっている光景とよく似ており、アメリカ全土の警察署付近で同じような光景が見られるそうです。

そこで支援者はベイルボンドに立ち寄り、システムを聞いてみると基本的には保釈金の立替えを行っているが軽微な犯罪に限定して保釈金の立替えと併用して裁判官が及ぶ限りは保証書も発行しているとのことでした。
但し、ベイルボンドは被告人が保釈条件を違反して裁判所に保釈金が没取された場合は保険会社と契約をしているので未収リスクは無く、どのベイルボンドの会社でも同じシステムとのことです。

こうしてアメリカでは裁判所の保釈許可が下りれば民間事業者であるベイルボンドが競って被告人に対して保釈金を用立てし、裁判所側もベイルボンドが出資した保釈金及び保証書を受け付けています。
極論のようですがこの写真を見た際、全国弁護士協同組合連合会(全弁協)が事業として始めようと企てている保証書(90%保証)での保釈手続きが認められるのであれば日本でも同様のシステムを行う事業者が多く参入し、アメリカの警察署付近と同じ様な光景にならない保証はないと感じました。

この全弁協とは全ての弁護士ではなく一部の弁護士が運営する営利目的の組合であり経済産業省の所轄です。
全弁協の業務及び発行する保証書(90%保証)をもし日本でも裁判官の裁量により受け入れられる様な事態になればこの先に発生する社会問題は火を見るより明らかです。

一方、日弁連はこの事業は日弁連自体では業務運用は難しいと公表していますが果たしてこの事業をどれほどの弁護士が望んでいるのかも見えてきません。
極々少数の弁護士の構想があたかも日弁連全体が待ち望んでいるかのように錯覚させる様な表現で推進していく様は民意が反映されず一部の代議士で法案を決定させていく権威主義的な政治と重なりその在り方に疑問と不安を覚えます。

保釈保証書共同発行事業とは

全国弁護士協同組合連合会(以下「全弁協」という。)は、去る5月31日の総会で「保釈保証書共同発行事業」を定款に追加することを承認したという事です。この事業は、昨年まで「保釈保証保険」という名称で推し進めてきたものです。名称を変更した理由は不明ですが、いずれにしても保証書に保険を付加して保釈手続きを行う事業の様です。刑事訴訟法は、第94条3項では「裁判所は有価証券又は裁判所の適当と認める被告人以外の者の差し出した保証書を以て保証金に代えることを許すことができる。」としています。続いて、保証書の説明では、「保釈の保証書とは民事上の保証契約のごとく本人の債務の支払いを保証するものではなく、被告人が保釈取消等の理由で保証金を没取される場合、保証書記載の金額を没取執行されることを国に対し承認するところの一種の公法上の契約というべきものである。」

そして、その運用として「有価証券や保証書による代納は保証金額の全部又は一部について許されること、保釈許可決定と同時、あるいは決定の後に許可しうることは第三者の代納の場合と同様である。なお保証書代用許可決定の方法と告知の範囲・方法については、第三者の代納許可の場合と同様であるが、第三者代納が通常保証金の金額についてなされるのに対して、保証書の代用は保証金額の一部についてなされる例が多いから残額について被告人や保釈請求者が現金で納付しなければならないこととなるので、その関係を明確にするためにも、決定書を作成して、被告人保釈請求者、保証書代用許可申請者に対して謄本送達の方法により、告知することが望ましい。」と定めてあります。

この定めにある代納については、当協会では設立以降今日までの9年間全国の裁判所に対して数えきれないくらいの代納許可申請を提出を行ってまいりましたが、未だ認められない状況です。設立当初当協会は条文のとおり直接裁判所へ保釈保証金を納付できると思っておりましたが、上記のとおり裁判所の第三者納付が認められないが為、現在の運用は担当弁護人を通じて裁判所に納付するスキームに変更せざるを得なくなりました。

先日、当協会で保釈保証金立替支援を行った中で、裁判官の保証書に対する考えがよくわかる出来事がありました。詐欺罪で起訴された被告人の保釈許可が下りた後の話です。この被告人の保釈保証金は1200万円で決定し当協会は支援を決定して、限度額である500万円の立替支援を行いました。残額の700万円の内、被告人が現金300万円、担当弁護人保証書で400万円の内容で裁判所へ納付の手続きに出向いた際に、担当弁護人保証書割合が高い為もう少し減額して頂きたいと要請があり、その後700万円の残額の内、被告人現金400万円、担当弁護人保証書300万円に変更したことで保釈手続きが完了致しました。 要するに、この被告人の場合、弁護士保証書割合が全体の1/3(33.3%)では多すぎて、1/4(25%)に変更することによってバランスが良くなったという事です。

裁判所へこれまで当協会では、多くの代納申請や保証書と保釈保証金を組み合わせた保釈申請を行ってきた中で感じますのは、法律上では代納や保証書での保釈手続きを許すことが出来るとしてありますが、実際の運用では、被告人の逃亡や保釈条件の抵触に対する抑止力として、第三者が保釈保証金を納付する代納や保証書では十分ではないという判断があるように思います。

全弁協で構想する保釈保証書共同発行事業の目指す決定保釈保証金額の90%部分を保証書で行い、しかも保証書には保険が掛けられているものとなれば、更に抑止力の観点からは、形上の紙としか見られなくなるこの事業構想では、裁判所の了解を得るまでの道程は遠いもののように感じます。

保釈率向上に向けての理想的構想」でも述べた様に、不必要な勾留を回避し被告人の人権が確保される為には、全弁協が企画する「保釈保証保険」や「保釈保証書共同発行事業」といった枝葉的発想ではなく、法曹三者による根源的な解決策を協議して頂くことが望まれます。それは、約10年前から取り組んできた当協会の活動の結果年間支援できる件数は約3千件に留まっていることが象徴しています。

保釈率向上に向けて理想的な構想

2009年7月から日弁連は「日本型保釈保証制度の実現をめざして」との事で日弁連法務研究財団の保釈保証保険研究会が発足されました。活動として韓国での保釈保証制度発足の経緯と現状を学び日本型保釈保証制度の実現ということですが一方で法制審議会「被収容人員適正化方策に関する部会」第15回会議にて議論された刑事施設に収容しないで行う処遇等の在り方等について同じく韓国の保釈保証制度が取り上げられました。

法制審議会の出席者である委員からの意見として「保険でうまくいっているから、保釈保証金というものが要らないのではないかというとそれはちょっとなかなか理解が直ちにしにくいように思われます。なぜならこの保険制度というのも結局は求償権の存在が担保力をもっている事で保釈保証金の担保力と結局変わらないのではないか。保険が保釈保証金の要らない理由には余りならないような気がします」との見方。これにより日弁連側としては「保釈については何らの成果もないまま、審議を終了している。相次ぐ冤罪事件の発覚にもかかわらず、保釈・勾留制度改革への展望はいまだ開けていない。」との意見が上がり、法制審議会の見解と日弁連の構想から轗軻数奇なる現状となっています。

以前、保釈請求の向上ということで日弁連は保釈請求キャンペーンという活動も行ったが、この活動に対しても同審議会の出席者である委員からの意見として「キャンペーンをやった割にはそれが反映されていないということでちょっとその運動が足りなかった」とのこと。保釈のありかたにおいて法制審議会と日弁連に差異が生じているように覗えます。国選弁護人の保釈請求も現状として低迷し続け、報酬としても1万円という費用は安すぎる。という事に加えて、保釈請求自体を被告人が国選弁護人に対して依頼しなくなったという現状の中、この保釈保証保険は被告の親族などの契約者は保釈金の10%を全弁協に預け入れ、ほかに手数料として2%を支払うという事だが刑事事件の大半は国選弁護事件であり、国選弁護人の選任は、通常、本人に現金・預貯金が50万円未満の場合になされていますが実際には大半の被告人にその程度の経済的余力のある方は極めて少数ということも実際の協会の業務を通じて解りました。これでは自己資金の用意すら困難というケースも多発するのではないかと思われます。

検察官は、きわめて抽象的な理由で勾留請求してくる上に検察側の基準に合致しない保釈が認められれば必ず準抗告して不服申し立てをし、その煽りを受け裁判所の保釈許可基準の厳格化が進み実務上,被告人が否認・黙秘しているときは「罪証隠滅のおそれ」があるとされ保釈が許可されないという運用が定着しており,そのことが自白や供述調書への同意への強い圧力を生み出すという「人質司法」の現実が指摘されています。最高裁の司法研修所が全国の裁判官37人で保釈に関する研究会を開催し、「証拠隠滅の可能性が低い場合、積極的に保釈を許可すべきだ」との意見が大半を占めたことも判明し重要な事は数字が目的ではなく適正な運用が重要ということでこれまで『証拠隠滅の恐れ』を過大視していた様に感じます。

上記の様な立場の方々の保釈における経済的不平等を緩和する為にも日本の保釈金額は高額であり、現在の日本の経済状況に見合った保釈金の減額化が必要であり、さらに保釈を促進させる為には,残存する逃亡の危険への有効な対処がいっそう強く必要とされ、勾留・保釈に関する現行法の運用を改善するにとどまらず,いくつかの立法的改革が必要とされるであろうと感じます。裁判所の保釈判断にあたり,被告人の生活環境に関する正確かつ十分な情報を提供するための保釈情報サービスについて,その意義・目的,制度概要,形態,効果,改革提案などを検討する保釈の許可にとって障害となるべき問題に対処するために,あるいは保釈条件の多様化,さまざまな拘禁代替措置の開発・活用を前提として,それらにともなう条件が遵守されるよう,国及び地方公共団体、地方自治体が有機的連携をとりつつ機能するとき,不必要な勾留が回避され,保釈が促進されることになると協会はとらえます。

日弁連 保釈保証事業構想について

現在、当協会では保証金を納めることを条件に裁判所が勾留中の刑事被告人を釈放する保釈について更生の観点から支援を行っております。今、この制度の運用を大きく変えようとする仕組みが、弁護士の全国組織、日本弁護士連合会(日弁連)の内部で決定しました。その内容は、この日弁連の弁護士の一部によって運営する協同組合、発行する保証書で保釈手続きを行うということでそれを行う理由として「人質司法打破」を掲げています。「お金なくても保釈請求可能に」こんな見出しで今年1月4日の朝日新聞も大きく報じています。この記事には、「最高裁や法務省とも協議を進めており、今年の5月の協同組合の総会で正式に認められれば今秋にも始める。」としています。この構想を巡っては弁護士会の内からも外からも首を傾げる声があります。そもそも日弁連が大前提とする保証書を保釈金に代えるという形は刑事訴訟法に規定があるものの認めるか否かは裁判所の自由裁量です。しかも、日本での一審での保証書による保釈の割合は1987年以降1%台、つまりほとんどが現金納付なのです。「最高裁がこれを逆転させ、日弁連の構想するこの制度を受け入れるのは信じ難い。」という声が日頃当協会を利用されている弁護士先生方から聞こえてくることと、もう一つの声として本来の保釈保証金の意味がなくなるという意見です。

当協会では、日弁連のこの制度が開始した場合に限り、同様のシステムを開始する予定を立てておりますが、当協会の職員の間でも保釈金の立替と違った保証書での手続きについては、最近危惧する意見が出ています。それは当協会を利用されている弁護士の先生方と少し違う理由です。当協会は、設立時に保釈保証金の立替支援は誰でも彼でもするのではなく、被告人の更生の観点から更生の期待できる被告人に限り支援することを理念として内規を定めております。その一部には、暴力団の資金源になる事件、暴力団の抗争事件に関する被告人と、何度も犯罪を繰り返す被告人には、裁判所の保釈許可が出ていても保釈支援は行わないことを記してあります(日本保釈支援協会 保釈保証金立替支援審査基準表)。

他方、日本での日弁連のこの制度導入と暴力団との関係です。全国の暴力団組員約7万人、暴力団排除条例下で定義付けされている暴力団関係者約80万人と政府が発表している中、年間起訴される被告人6万人弱の約5割に暴力団構成員及び準構成員が含まれています。([PDF]警察庁 平成23年の暴力団情勢(確定値版) P.8(pdf 12枚目) 図表2-2及び当サイト保釈に関する数値「保釈者の状況」参照)。
更にこの暴力団の背後にいるいわゆる暴力団関係者を含めた被告人総数を考慮するとその割合は当然それ以上のものとなります。

日弁連は、この構想で年間保証書を利用する対象者約3万7250人と試算しており(「自由と正義」2011年1月号)裁判所の保釈許可が出た被告人は全て利用対象としています。そうなれば相当数の暴力団員・準構成員及び暴力団関係者がこの中に含まれてしまう事になります。

1970年代半ばから、日本の保釈率が低下してきた背景に暴力団関係者が逮捕・起訴されたとき、保釈手続きをしないケースが多くなってきたことです。これは保証金納付の際、当局が暴力団関係者の保釈金(ブラックマネー)の出所を調べたり、押さえたりすることや最近は暴力団関係者のほとんどは、保釈金を用意できなくなったこと等を昨年暴排条例施行時当協会へレクチャーに来られた警視庁の方から聞かされました。

加えて保釈率低下の一つの要因として、年々国選弁護人が保釈請求に対して消極的になったという日弁連からの意見もありますが、実はその前に被告人からの保釈請求自体が国選弁護人に対してしなくなった暴力団関係者の割合が増えたことが、保釈率低下の根本原因と当協会はとらえるようになりました。

この日弁連の制度は暴力団員・準構成員及び暴力団関係者からみれば、そうした問題が解消されるということで期待が高まることが予想されます。実際、最近当協会へ申し込みをして断った暴力団関係の事件の申込人から朝日新聞の記事に関する「新たな保釈保証制度」についての質問をよく受けるようになりました。このような理由から日常、保釈支援業務を行う我々職員は敏感にこの制度の危険性を感じています。

因に、当協会の平成22年度立替件数は2,527件、平成23年度は2,700件位になる予定です。今後の立替件数の推移は3,000件を上限に横這いになると思われます。なぜならば、前述に述べた通り、暴力団関係事件に係る被告人を対象外として更生の観点から当協会の審査基準に計れば我が国では年間3,000人程度の対象者しかないという事が保釈支援活動を通じて解ってきたというのが現場の意見です。

暴力団員や暴力団関係者にも、もちろん人権はあります。ただ一方で彼らが再び組織に合流することを早め活動を後押しすること、かつ、事件被害者の脅威になるという状況を司法がお膳立てする結果につながることは、この暴力団排除条例時代に日弁連が強力な支援団体になりかねないのです。また「弁護士の協同組合が暴排条例に抵触する行為、東京都暴力団排除条例第18条(暴力団関係者と保証委託契約を取り交わす行為)は制度そのものに問題がある。」といったことも上記の警視庁の方からも聞かされました。日弁連は今年5月の全弁協の総会を経て、今秋にも制度をスタートさせる意向であると報じられています。しかし、なぜそこまでして関係者がこの制度創設を急ぐのか、いつも当協会を利用されている弁護士先生からも疑問の声が出ています。「人質司法」打破という大義にしても人質司法とは「自白と引き換えに保釈を許すこと」を指していることからこの制度が打破するという事はおかしいという意見もあります。

一昨年、日弁連刑事弁護委員会からの要請を受けて、当協会はこの保釈保証保険制度創設のチーム法務研究財団の保釈保証保険研究会議へ講師として出席し、保釈に関する属性データを基にお話しをさせていただきましたが、暴力団排除条例が一定の成果を上げている現在、この新たな制度が日本の社会に順応し、長く根付いていくものになるようにこの制度の決定機関においては、実施の是非も含めて、今一度多面的な見地から検討・議論していただくことを希望します。当協会は、これまで貫いてきた協会理念の基、今後も断固暴力団への支援は行わない姿勢です。


追記

当協会は公益社団法人の取得に向けて、上記文中にあります保釈保証金立替支援審査基準表・保釈に関する属性データ等、運営上主要な書類の全てを平成22年度中に内閣府へ提出済みです。

保釈金立替のお問い合わせ、申込みはこちら。

03-3663-6655 受付時間9:00~17:00(土・日・祭日を除く)

【警告】
保釈保証金立替システムは、当協会が開発したシステムです。(特許出願2004-225786)当協会は理事、監事を弁護士と公認会計士で構成している一般社団法人です。最近、営利業者が当協会類似の保釈保証金立替業務を行っている事実がありますのでご注意ください。尚、当協会名と類似の商号を使っている業者に対しては、警告または補償請求を致します。