法制審議会の出席者である委員からの意見として「保険でうまくいっているから、保釈保証金というものが要らないのではないかというとそれはちょっとなかなか理解が直ちにしにくいように思われます。なぜならこの保険制度というのも結局は求償権の存在が担保力をもっている事で保釈保証金の担保力と結局変わらないのではないか。保険が保釈保証金の要らない理由には余りならないような気がします」との見方。これにより日弁連側としては「保釈については何らの成果もないまま、審議を終了している。相次ぐ冤罪事件の発覚にもかかわらず、保釈・勾留制度改革への展望はいまだ開けていない。」との意見が上がり、法制審議会の見解と日弁連の構想から轗軻数奇なる現状となっています。
以前、保釈請求の向上ということで日弁連は保釈請求キャンペーンという活動も行ったが、この活動に対しても同審議会の出席者である委員からの意見として「キャンペーンをやった割にはそれが反映されていないということでちょっとその運動が足りなかった」とのこと。保釈のありかたにおいて法制審議会と日弁連に差異が生じているように覗えます。国選弁護人の保釈請求も現状として低迷し続け、報酬としても1万円という費用は安すぎる。という事に加えて、保釈請求自体を被告人が国選弁護人に対して依頼しなくなったという現状の中、この保釈保証保険は被告の親族などの契約者は保釈金の10%を全弁協に預け入れ、ほかに手数料として2%を支払うという事だが刑事事件の大半は国選弁護事件であり、国選弁護人の選任は、通常、本人に現金・預貯金が50万円未満の場合になされていますが実際には大半の被告人にその程度の経済的余力のある方は極めて少数ということも実際の協会の業務を通じて解りました。これでは自己資金の用意すら困難というケースも多発するのではないかと思われます。
検察官は、きわめて抽象的な理由で勾留請求してくる上に検察側の基準に合致しない保釈が認められれば必ず準抗告して不服申し立てをし、その煽りを受け裁判所の保釈許可基準の厳格化が進み実務上,被告人が否認・黙秘しているときは「罪証隠滅のおそれ」があるとされ保釈が許可されないという運用が定着しており,そのことが自白や供述調書への同意への強い圧力を生み出すという「人質司法」の現実が指摘されています。最高裁の司法研修所が全国の裁判官37人で保釈に関する研究会を開催し、「証拠隠滅の可能性が低い場合、積極的に保釈を許可すべきだ」との意見が大半を占めたことも判明し重要な事は数字が目的ではなく適正な運用が重要ということでこれまで『証拠隠滅の恐れ』を過大視していた様に感じます。
上記の様な立場の方々の保釈における経済的不平等を緩和する為にも日本の保釈金額は高額であり、現在の日本の経済状況に見合った保釈金の減額化が必要であり、さらに保釈を促進させる為には,残存する逃亡の危険への有効な対処がいっそう強く必要とされ、勾留・保釈に関する現行法の運用を改善するにとどまらず,いくつかの立法的改革が必要とされるであろうと感じます。裁判所の保釈判断にあたり,被告人の生活環境に関する正確かつ十分な情報を提供するための保釈情報サービスについて,その意義・目的,制度概要,形態,効果,改革提案などを検討する保釈の許可にとって障害となるべき問題に対処するために,あるいは保釈条件の多様化,さまざまな拘禁代替措置の開発・活用を前提として,それらにともなう条件が遵守されるよう,国及び地方公共団体、地方自治体が有機的連携をとりつつ機能するとき,不必要な勾留が回避され,保釈が促進されることになると協会はとらえます。